【事業再生】アフターコロナの過剰債務問題と「中小企業活性化パッケージ」

アフターコロナの過剰債務問題

小林慶一郎氏、と言えば、昨今では「コロナ問題でのコメンテーター」でおなじみですが、高名な経済学者です。

同氏は銀行の不良債権問題に関し、複数の論文があるのですが、今回はナッシュ均衡で不良債権問題を語るという、非常にユニークなアプローチを行っています。

不良債権問題の経済学:経済産業研究所・小林慶一郎

 

ザクっというと、「債務額が収益で返せる額を超えると、借り手は”やる気を失う。(デッドオーバーハング)」「裏返せば、債務免除をすれば、やる気(返す気力)が戻るので、企業と銀行双方がメリットを享受する」「不良債権問題は先送りせず、早く片付ける」、この3点です。

なぜこの時期にこの論文が出たのか

注目すべきは「なぜこの時期にこの論文が出たか」です。

2020年から始まる「コロナ禍」は経済活動に甚大な影響を与えました。売上が9割ダウンとか、信じられない状況が突然事業者に襲い掛かったのです。無利子無担保の通称「ゼロゼロ融資」が大規模に行われて、事業者の資金繰りは繋がれ、過去最低の倒産率が続いています。が、コロナ禍は既に3年目に突入、オミクロンの猛威はなかなか収束しません。しかし、制度上最大5年間の元金返済据置期間は、「1-2年で収まるでしょう」という読みから、通常2年長くて3年の据置期間設定がメジャーです。つまり、今年の4月5月頃から元金返済が開始されてしまうのです。

長期借入金は「収益から弁済する」のが基本です。しかし、収益はなかなか回復しません。収益が無い中で返済をすると、「資金繰り償還」という「運転資金で返済する」状況になります。それは「自転車操業」であり、どんどんカネグリが忙しくなり、極めて厳しい状況に「追い込まれる」ことになります。それでは大変、ということで据置期間の延長(リスケジュール)に至るのですが、企業収益が回復しない限りリスケしっぱなしで、根本的な問題解決からは遠いものになります。

令和4年3月4日、中小企業庁より、ある政策パッケージが公表されました。

 

借金免除?「中小企業活性化パッケージ」が公表

中小企業活性化パッケージを策定しました:中小企業庁

複数の施策がパッケージとして入っているのですが、目玉は「中小企業版私的整理ガイドライン」の制定です。 私的整理ガイドラインは以前からあったのですが、ほぼ大企業、特に上場企業が上場維持しながら債務免除を受ける仕組みとして使われてきました。 今回は、コロナ禍に喘ぎ、ゼロゼロ融資の返済に困った中小企業へのアプローチが、新たに作られたのです。

そこで「債務免除をして企業を救いましょう。それが経済回復のためなんです」という上述の論文が理論的支柱となるわけです。 タイミング的に援護射撃を撃っている、と私はみています。

みんながみんな借金免除、というわけではありません。ちゃんと経営責任を取ることが大原則になります。 ただ、コロナ禍で大きな借金抱えて「どうしよう、夢も希望もない」「破産しかない」と、追い込まれる事業者の方には、「まずは相談してみれば?」と言っておきたいのです。

また、返済が苦しい、と思ってる方には、別途方策が作ってあり、国費補助を受けて専門家の伴走支援を受けることができます。

 

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