「資金繰り表」作っていますか?

皆さん、「資金繰り表」って、作っていますか?

2020年3月、新型コロナ感染症の拡大。これほど、日本全国の中小企業事業者が「一斉に」「資金繰り」を意識したことはなかったのではないでしょうか。

官民挙げての「コロナ緊急融資」(いわゆるゼロゼロ融資)は42兆円を超え、今まで借入したことが無い事業者さんも無担保無金利の借入を行い、日本経済はクラッシュから救われました。コロナ緊急融資に救われた事業者は数知れません。

でも、「借りた金は返す」。この万国共通のルールに悩まされる企業が「激増」しています。コロナ資金のような「長期借入金」は「収益から返す」ことが前提です。2-3年経てばコロナは収束し、コロナ借入を弁済する頃には収益は改善するだろう、という貸し手・借り手両社の思惑は、コロナ禍の思わぬ長期化と、世界的インフレによる資源高・原料高など複次的要因で見事に裏切られています。

回復しない収益の中で容赦なく始まる元金返済。それは、企業体力を徐々に削ぎ、コロナ禍からの回復の障害になって来る可能性が高いのです。
今回は、「コロナ特別融資を受けた方に、「いま、すぐに伝えたいこと」を、簡潔に記したいと思います。

 

1. 性急なリスケジュールは避ける

「返済がきつい」=「リスケ申請」、と安易に元金返済の軽減措置を要請することは、「ゼロゼロ融資」においては、「ちょっと待って」と考えましょう。と言いますのも、従来の感覚でリスケすると、「本当に必要な資金が出ない可能性が高い」からです。
運転資金は売上が減少する場合(赤字資金)にも不足しますが、売上が増加する場合(増加運転資金)にも必要になります。後者のロジック、事業者の方は肌感覚で知っていますが、実は金融機関の人たち、あんまり知りません。「御社はゼロゼロ融資をリスケしてるので、新規の貸し出しを見合わせます」と、言われ、相談に来られる社長さんが、にかわに増加しています。

2.コロナ借入の「借り換え保証」を利用する

実際に「ゼロゼロ融資」の返済が開始され、どんどん現預金が減っている事業者さんは結構いて、日本公庫や金融機関の融資担当に相談が急増しています。その際、「もう1年返済開始を延ばしましょうか」と言われる場合があります。「それはありがたい」と条件変更書面にサイン、しないで、「借り換え保証」を使ってみてください。これは、より長期の借入金に「借り換える」融資です。前段の話と違うのは、「リスケ債権か、正常債権なのか」ということです。事業者にとってはあまり関係ないのですが、金融機関の見方が180度違います。「追加のカネを出せるのか、出せないのか」。これは事業者にとっては死活問題です。ちょっとした返済計画書を提出しますが、大した手間ではないので、申し出てください。目先の資金繰りの安定化はもちろん、いざ業績が回復して増加運転資金が必要になったときの金融機関の対応は全然違ってきます。

3.Cash is King

まさしく「現金は王様」という意味ですが、「ゼロゼロ融資」を満額借りて現預金に積んでいる事業者の皆さん、「返済が始まったら一括返済しますよ」と思っていませんか?まさかの時に借りたけど、利用していないから「返す」。これ、待った方がいいです。ギリギリまで手元においておきましょう。というのも、これだけの有利な条件、多額の融資は、「危機だからこそ利用できた」のであり、返済したからと言って、同じ金額を借りれるはずがありません。危機はコロナだけではありません。現金は最大の武器です。大切にしてください。

4.ポストコロナの資金繰り

コロナか否かにかかわらず、「危機」は、経営全体を見直す「絶好の機会」です。
・売掛期間を短縮する
・在庫を減らす(回転率を上げる)
・買掛期間を延ばす
の3つを行う事で、資金繰りは楽になります。
更に、
・不要不急の「お付き合い保険」や「お付き合いサブスクサービス」を見直す
・不採算店舗から撤退する
・不採算事業を閉鎖、売却する
・遊休資産を現金化する
なども、相手が「しょうがないですよね」と思うときが最大のチャンスです。どんどん現預金を積み上げましょう。(借金を返済しましょう、とは言っていません。)
平時においては、こういったドラスティックな事はなかなかできないものですが、有事の際には「緊急避難性」がそれを可能にしてくれるのです。特に「コロナ禍」は全世界的に同時進行した非常にレアな有事であり、この機を逃さないようにしましょう。

5.今こそ「資金繰り」に拘ろう

「資金繰り表が作れない」事業者が、実に多くいます。前述の「ゼリゼロ融資」の返済に窮する事業者の資金繰り表作成を支援するために、各都道府県の信用保証協会は、国費で専門家に補助を出している有様です。
資金繰り表で最も注目するところ、いや、唯一と言ってもいいところ、それは「現預金が底をつくか否か」です。資金繰り表を作ると、自社がいかに経費を使っているか、いかに「銭足らず経営」であったか、いかに無駄遣いが多かったか、がよくわかるようになります。なぜかというと、資金繰りは「リアルなカネの流れ」だからです。「腹落ち」し、「現実を直視」するからです。事業者にとってもっともストレスなのは、今も昔も「資金繰り」です。試算表や決算書は「過去の数字」であり、結果に過ぎません。あまり心に響かないものです。反対に、資金繰り表を作るということは「未来を創る」と同義語です。「2か月後に現預金ゼロ!」と分かると、結構痺れますよね。その「痺れ」こそ、経営を強くするドライバーなのです。「痺れ」を感じたら、それをどのような方法で解決するか。「売上強化」なのか「経費削減」なのか、「借入調達」なのか、「資産売却」なのか。頭をフル回転させ、戦略を立て、決定し、動く。危機は会社を強くし、修羅場をくぐればくぐるほど、経営者は胆力を付けます。

6.最後に

資金繰り表はB/SとP/Lが織り成すハーモニーであり、更にキャッシュフロー計算書の概念も理解できます。
一気にファイナンス知識のレベルを上げることができます。
経営上の不安は「先が見えないこと」に起因するものが大半です。繰り返しになりますが、資金繰りを見通すという事は、「将来を予見する」ことです。将来が漠然としているから不安が増すのであり、「2か月後に500万円不足する」と、具体的にわかった時点で、「2か月後の未来は予見できた」ことになります。2か月あればいろんなことができるので、問題解決の可能性は大きく高まるのです。

今後、数回のシリーズで、実践的な資金繰り表の作り方をご提示して行きたいと思います。